背景
焼却灰の有効利用として、溶融固化による減溶化から、リサイクル可能な灰溶融スラグを製造し、さまざまな分野で利用されています。空冷スラグでは道路用路盤材やコンクリート用骨材、又水砕スラグでは土木資材、路床材などに利用されています。
このような良質スラグの管理に塩基度(CaO /SiO2)による品質管理があります。特に生産ライン上では迅速な管理分析が必要になります。そこで蛍光X 線分析装置を現場で用いたスラグの塩基度分析が簡便に行えましたので報告します。
測定条件
- 測定装置:OURSTEX110型
- X線管球:Pd(50W)
- kV-mA:15-1
- 測定時間:100(sec)
- 検出器:SDD(シリコンドリフトディテクタ)
- 冷却方式:ペルチェ電子冷却式
- 試料室:大気
- 分光室:真空
- 試料:高炉スラグ(図1-a),水砕スラグ(図1-b)そのまま試料室に入れ分析
測定結果
スラグ定性分析結果
OURSTEX110 型でスラグの軽元素範囲( Al~Fe)までの定性分析結果を
図2 に示します。尚、粉末試料の場合、ポリエチレン製試料容器に厚さ4 μ
m の高分子膜を張ったものにサンプリングし測定しました。
分析精度
測定結果
実サンプルによる分析精度結果
溶融スラグ5 点( 粉末) を用いて、Al2O3、SiO2、CaO について
化学分析値と蛍光X 線強度の関係を図3 ~ 図5 に示します。
実サンプルによる塩基度分析精度結果
3-3 のスラグ試料を用いた、塩基度(CaO/SiO2)と強度比の関係を図6に示します。
塊状スラグ( 図1 -a)で同様に塩基度と強度比の関係を図7 に示します。
測定結果
塊状スラグの偏析検査結果
凹凸のある塊状スラグの測定箇所を1 0 箇所変えて測定した結果を表2 に示します。
まとめ及び考察
スラグの分析において図1 -a 高炉スラグ( 塊状)、図1-b 水砕スラグ( 粉状)での、塩基度(CaO/SiO2)とX 線強度の相関は十分に得られました。但し、塊状スラグと粉末状スラグは、図6 、図7 の検量線式の違いから区別して管理する必要がある結果となりました。高炉スラグなどの塊状で生成される試料では、その生成過程で固化に至るまでの冷却速度等による< 表面-内部> での濃度偏析が生じる恐れが推測されるため、各構成元素の化学分析値とX 線強度の相関が得られないケースがあります。しかし塩基度とX 線強度比では塊状スラグにおいても十分分析できる結果となりました。